馬鹿琴の旅立ち

独り言を綴っています。主にお城や史跡がメイン。時にはお相手して下さい。

なぜなに八犬伝Ⅴ

第二十一回から第二十五回まで超意訳:南総里見八犬伝をお送りしました。
今回は浜路くどきと信乃の出立まででした。
悪役網乾も悪巧みで立ち回り、信乃ちゃんは実は大ピンチ。
残された浜路ちゃんも大ピンチ。
今後どうなりますか、さあ、お立合いって感じです。

例によって、謎めいた箇所がいくつかありましたので、突込みしていきましょう。

①小判と永楽通宝
第二十三回において、信乃は父番作が遺した小判を10両持っています。父の葬式と法要で4両使い、糠助さんの奥さんの葬式に1両使いました。
父の言いつけ通り、1/3を父の葬儀で使い、残りを大事にして、自分や友のため、大切なことのために使った訳です。

凄いぞ、信乃ちゃん。さすが考の珠と文字を持っているだけのことはあります。
糠助さんも大切な【友】だった訳です。苦労人で貧乏人の糠助さんも浮かばれたことでしょう。

と、ここは良いのです。
問題は小判10両です。室町時代の貨幣ってどうなっているのでしょう?

同じ二十三回でも、糠助のお葬式代に永楽銭700文を費やしたと書かれています。
そうです、永楽通宝、信長の旗印でも有名な永楽通宝が中国明第3代皇帝永楽帝の時代に鋳造されて、日本にも大量に入ってきました。

旗印はこんな感じです。

お金はこんな感じ。

永楽通宝は1411年から作られていますので、物語の時代でもこれはセーフと言えるでしょう。

小判ではなく大判ですと、戦国期の天正年間に秀吉が天正大判鋳造を命じております。

それより前の時代ですと、甲斐武田氏の甲州一分金しか見当たりません。
従って小判は江戸時代以降のものと言って良いでしょう。
皆さんには山吹色のお菓子をお見せしましょう( ̄ー ̄)ニヤリ

悪代官ごっこしましょう。

 

信乃君、君の10両、偽小判かもしれませんよ~(´・ω・`)
それにしても武家政権たる鎌倉幕府、室町幕府がいずれも貨幣を造っていないと思われることが意外です。
やはり米の生産量に頼り、宋や明という外国の銭を使うところに特色がありそうです。
これって儒学の弊害だったりするのでしょうか。

 

②かかしが持っている弓って何だ
第二十五回には不思議な描写があります。
生真面目な額蔵くんは、自己流で召使いの仕事の間に特訓をします。

かかしが持っている弓を使って、弓の道もある程度習熟し、牧場の荒馬に乗って自然に騎馬術を会得

とあります。
馬に勝手に乗るのはどうなのよとか思いますが、更に不思議なのはかかしの弓です。
かかしと言えばさだまさしさんの歌にもあります。素敵な歌ですが、弓は出て来ません。

江戸時代以前にはかかしに弓を持たせていたのでしょうか。
と思って調べていたら、案外簡単に出て来ました。

コトバンク

日本大百科全書(ニッポニカ) 「かかし」の意味・わかりやすい解説
かかし
案山子と書く。農作物の鳥獣害を避ける手段で、およそ3種に分けられる。
(1)田に注連(しめ)をはり、竹や藁(わら)で人形をつくり、蓑笠(みのかさ)を着せ弓を持たせて田畑に立て、鳥獣の害を防ぐもの。「しめ」、「そめ」などともいう。
(2)かがし(嗅(か)がし)とよばれ、悪臭を放つものを串(くし)に刺して鳥獣を追い払うもの。
(3)「おどし」という、音をたてて鳥獣を脅す鳴子(なるこ)もかかしの一つといえる。これらの3種は、地方によって名称や内容がさまざまに混用されている。

何だ、私が知らないだけだったんですね。

中日新聞の記事にもありましたよ。

しかしこんな弓で(失敬)、弓を学べるものでしょうか、はて?

 

③額蔵の母の墓行為は詐欺行為?
第二十五回ばかりで恐縮ですが、力尽きた額蔵の母上のお墓は土饅頭だったのですが、まだ子供だった額蔵は一計を案じて墓に祠を建ててしまいます。
その手段は、夜に注連縄を榎に掛けるということです。
これの奇瑞を信じてしまった里の者たちは、祠を建てて、参拝する様になります。
結果的には良かったのですが……厳密には額蔵くん、詐欺行為ですぞ!!

気持ちは分かりますけどね。

 

④信乃はうっかりが過ぎる
信乃は大切な宝刀村雨を持って、古河にほど近い栗橋の宿に参ります。
蟇六の尾行がないか心配で、無口のまま宿まで来たので、きっと疲れていたことでしょう。
しかしその刀は網乾によってすりかえられているのは、読者の皆様がご存じの通りです。

もし皆さんが信乃なら、宿で一度は刀身を確認しませんか?
往来でやれば、辻斬りだ、と騒ぎになりますから、やはり宿で実施すると思うのです。

古河公方足利成氏に足利家伝来の刀を献上して、仕官を願うのですよ。
一度は抜いて、確認するものでしょう?
まして水を吹きつける奇跡の刀なのですよ。幾ら疲れていても、確認しなくてはいけませんよ、信乃ちゃん。このうっかり者め!

 

⑤信乃は実は
この信乃編と呼べるパートの中で、最大の疑問に触れない訳にはいきますまい。

犬塚信乃は、実は浜路を好きではない。

あ、書いちゃった。とうとう書いちゃった。
好きではない、と言うより、あんまり興味がない様な気がします。
と言うのは第二十四回、信乃は額蔵との会話でこんなことを言っています。

女子というものはすべて水性で心変わりが早く、寄るにも移るにも早い。私がここにいなくなれば、親の心に従う様になるだろう。大丈夫たるもの、恋々として一女子に生涯を誤る訳にはいかない。再び得がたいものは時だ、ただ打ち捨てていくのみ

 

う、打ち捨てちゃうんだ(-_-;)

聞いていた額蔵もついついこんなことを言うのです。

額蔵もそうでございますねと答えて、

ブルータス、お前もか!てか額蔵、お前もかよ。

現時点での信乃の目標は何でしょうか。
・まず外道の伯母夫婦のもとから村雨を守って離れたい
・古河の足利成氏のもとに行き、先祖の名誉を回復して、できれば仕官したい
だと思います。

ですから従者としての額蔵は必要(?)としても、浜路姫を連れて行けないのです。
連れて行ったとしても、古河の動向が分からないので、はっきり言って足手まといですし、仕官の是非も不明。
まして、今後大塚の里に顔向けができなくなるのです。

さてもう一点検証したいことがあります。

軍木五倍二が簸上宮六のために結婚の仲介をして、蟇六の家に結納の品を送ったことを信乃は知っていた。その日のことを額蔵が垣間見ており、信乃にそのことを告げていたのだ。
今、また伯母夫婦が年来密かに手中にしたいと願っていた村雨の名刀を進呈せよと勧めるということは、つまり自分を追い出して、浜路を陣代簸上宮六に嫁がせる下心だと悟った。

 

別途、浜路と代官の婚約の話があることを信乃も額蔵も知っているのです。
本人はまだ知りませんが、浜路をやはり打ち捨てていくのです( ;∀;)

更に信乃は余計なことを言いいます。

第二十五回の浜路くどきの一節。

出発するのがつらくとも私がここを出て行くのも、お前のためでもある。たとえしばらく別れるとしても、互いに心が変わらなければ、また一緒になることもあるだろう

 

代官に嫁がされてしまうのに、また一緒になることも、はないのではありませんか。

うーん、ここの最適解は何でしょうね。

信乃:浜路、実は伯母夫婦はお前を密かに代官殿に嫁がせる気だ。
浜路:え、そんな。私はどうしたら?
信乃:代官殿に嫁ぐ気がないのなら、古河に一緒に行くか、額蔵を供周りにつけるから練馬辺りに逃げなさい。
浜路:古河に一緒!嬉しい、もう死んでも構いません(ポッ
信乃:古河までの道中はきついし、向うでは仕官できないかもしれない、生活も厳しいぞ。
浜路:はい、ご迷惑はお掛けしません。嬉しいです。
信乃:ならば今から先に行きなさい。額蔵を呼んで今から出発だ。何も持っていけないぞ

てな感じですが、後から村長から浜路姫を誘拐したとか言われますね、絶対。
そして代官から指名手配を食らう……なあんて結末が予想されてしまう。
そしてメンヘラになった浜路はひたすら冒険の足手まといになるという(笑)

あ、大事なことを忘れていました。
第二十四話のラストで、村雨は網乾左母二郎の手に落ちちゃってますね。
となると、信乃の古河公方での仕官は絶望的です。物語通り、芳流閣での決闘に繋がっちゃう。

話は戻りますが、信乃は代官の結婚話を浜路に告げていません。
これは、ここだけは不誠実な気がします。
仮にも大塚村の人達には、信乃と浜路が結ばれる予定となっております。浜路もその気満々ですから。

信乃は、やはり浜路くどきの間に言うべきだったのではないでしょうか。
実際はなかなか困難なことですけれども。

ということで、信乃の態度は浜路に対して酷過ぎではありますまいか。

蛇足ですが、浜路が額蔵と練馬に逃げたとしたら……
練馬は関東管領方の山内上杉の領地になっており、代官簸上は石浜城主大石の被官、古河方ですかね。
第一線の戦場っぽくて、女子連れでは額蔵も厳しいでしょう。
経済的にもきついので、NGですね。
まして浜路はきっと額蔵を単なる召使いだと思うので、2人の間にはバチバチ火花が散りそうです。
信乃が私の義兄弟だよと言えば納得できる……いやいや。詰んでしまいますねえ。

 

長々と語りましたが、信乃は実は好きではなかったかもしれないというお話でした。

 

以上、なぜなに八犬伝でした、でわ。