南総里見八犬伝
第二十六回から第三十回まで超意訳:南総里見八犬伝をお送りしました。今回は芳流閣の決闘の直前と額蔵の暴れっぷりと危機一髪まででした。そしてとっても可哀想な浜路ちゃん。オヨヨヨ。 例によって、謎めいた箇所がいくつかありましたので、突込みしていきまし…
さて、夜が明ける頃、近隣の百姓たちや村の長老たちが集まってきて、事の次第を尋ねて騒ぎ立て、ある者は問注所へ訴え出ようとし、またある者は額蔵たちを庇っているうちに、夜はすっかり明け、六月二十日ももう巳の刻(午前10時頃)になってしまった。 そこ…
浜路は、兄の話す物語を聞いて、嘆きは増した。面影も知らない亡き父と母について、兄である道節が切実に語った言葉に、失っていく命を引き止められて、しばらくの間、苦痛を忘れるほどであった。 願いは一つ叶ったけれども、また夫のことを考えてみると、宿…
浜路は涙を止められず、養ってくれた親の邪悪さと網乾の悪知恵を聞くうちに、初めの恨みは更に募り、無常なこの世のできごとに胸が張り裂けそうになった。 かりそめにも離れて暮らすことになった、昨日も今日も着ているこの旅の衣。 夫である信乃の苦難を思…
網乾左母二郎は前の夜更けに神宮川の夜風に当たったせいか、翌朝から寒気に震え、熱に苦しんでいた。 この日は手習いの子供たちを早く返して、夕飯も食べずに寝ていた。そして次の日の午の刻の貝を吹く頃合い(昼12時ごろ)に具合が良くなったので、寝具を片…
早くも明け方の鐘の音に驚かされ、信乃と額蔵は同時に起き上がり、いつものように支度を整えた。 急いで宿を出たものの、さすがに別れが惜しくなった。額蔵は夜が完全に明けるまで信乃を見送ろうと古河の方へ進もうとし、信乃は額蔵を見送ろうと江戸の方へ帰…
蟇六は、まるで水に溺れたかのように信乃に介抱させ、しばらくして目を開いた。手足を動かし、ようやく正気に戻ったように助け起こされた。 自分の脈を取り、「何とか私は再び生き返った。危なかった」 とそばの柱にすがって立ち上がると、信乃は伯父の速や…
話が変わって、陣代簸上宮六は、先に村長蟇六の娘浜路を見初めた時から、恋焦がれてしまっていた。寝ても覚めても浜路のことを忘れられず、誰か仲を取り持ってくれないだろうかと考えていた。その考えが顔色に現れた様子で、陣代に媚びて威張っていた部下の…
犬塚信乃戌孝は、伯母の夫である大塚蟇六の家に移り住んでから、不承不承ながらも日々を送り、年月を重ねた。しかし、里のほとんどの人々とは親しく言葉を交わすことはなかった。 ただし、百姓の糠助だけは、古い馴染みであり、伯母も信乃のことだからと疑わ…
もう一度述べるが、大塚蟇六は信乃を迎えて、亀篠とともに愛想良く歓待しているが、それはただ外聞を飾るのみであった。蟇六夫婦は実は心に刃を研いでいるのだ。 例えば蟇六はすでに里人たちを欺いて、番作の田畑を横領している。少しも信乃のために使われる…
【口絵】犬山道節忠与(ただとも)斉の国の田単、燕を破った日、火は平原を燃やす。阿難、釈迦の入滅の時、煙雨から良く防いだ。 犬飼見八信道(のぶみち)剣術の極意は風の柳である。 火の属性持ちの道節さんと柔らの達人の現八さん、まだ出番は先 酢があれ…
第十六回から第二十回まで超意訳:南総里見八犬伝をお届けしました。犬塚信乃編、もしくは犬塚親子編といった感じでした。今回も謎、というか気になったことを書いてみます、どうかおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。 ①手束ちゃんは武道の達人か…
信乃は庭から現れた人の呼び止める声を聞いても、まったく止めようとはしなかった。早く身体に突き立てようと刃を持ったが、腕が痺れて死ぬことはかなわなかった。 こんなはずではないと何度も死のうとしたが、真っ先に飛び込んで来たのは誰でもない、再度来…
こうして百姓の糠助は中途半端に信乃を助けようと犬を蟇六の屋敷の裏門に追い込んで計画したことは、犬を失うだけではなく、とばっちりが自分自身に関わっては困ると早く逃げ返ってしまった。 家の者に事情を話して、「もし村長のところから人が来ても、いな…
応仁は二年で文明と改元した。1470年文明二年、信乃十一歳、母を亡くして三年以来、父に仕えてますます親孝行を尽くしていた。 その間に犬塚番作は歩行不自由なことに加えて、早くに男やもめとなってしまったので、年を取るごとに気力が衰え、齢五十にもなっ…
こうして犬塚番作夫婦は年来の悲願を成し遂げて、男児を出生した。産後は、母も子供も健やかで、産屋をしまうころになった。「さて赤子の名前を何としようか」 と女房手束に語り掛けると、しばらく考え込んで、「世間では子育ての経験のなきものは、男子であ…
こうして大塚番作は軽傷ではあったが、一昼夜かなりの道を走ったので、疲れとともに傷が痛み、一晩中ぐっすりとは寝られなかった。 枕に聞こえる松風、谷川の音が騒がしく、寝るというよりはまどろみ、襖越しに話し合う声に目が覚めた。枕から頭を上げて良く…
第十一回から第十五回まで超意訳:南総里見八犬伝をお届けしました。ようやく安房編伏姫の物語が落ち着き、犬士列伝に入っていくようです。気になったあれこれについて書いてみます、どうかおつきあいのほどを。 ①中将姫伝説第十二回で、姫の心映えは、横佩…
前回までにすでに説明を終えていることだが、伏姫が富山に入ったころは、十六歳の時であり、1457年長禄元年の秋である。 また金碗入道ヽ大坊は、1441年嘉吉元年の秋、父孝吉が自決した時はすでに五歳であったので、1458年長禄二年富山での伏姫昇天の憂いごと…
そばにいた堀内貞行らは伏姫の自決を止められず、あえなくも美しい花を散らせてしまったことが残念で仕方がなかった。 そんな中に金碗大輔孝徳は、男に勝る姫君の末期の一句に奮わされて、身を置くところがなくなったのか、亡骸の近くに落ちていた血に染まっ…
長く暗い無明の眠りから、伏姫は覚めた。 昨日、童子から思いがけずも話を聞かされたが、あれは夢ではなかったのか。童子の言葉の怪しさを疑う間もなく、思い出すと涙の雨にあふれるのだった。 袖だけではなく、はらわたを絞る様に泣き、むせかえり、嘆き、…
穢れが多く煩悩にまみれたこの世の中、心を惑わすものばかりの火宅から誰が逃れられるというのだろうか。 祇園精舎の鐘の音には諸行無常の響きがあるが、人を愛する者は、恋人との後朝の別れを惜しむがために、時間が経過することを嫌う。 沙羅双樹の花の色…
【再識】 この編第二巻(第十四回)に至ると、伏姫のことは書き尽くしたことになる。 第十回の題名は【禁を犯して、金碗孝徳、女性を失う/腹を裂いて伏姫、八犬士を走らす】、これは本当は第十三回のものであった。しかしそれ以前に出したのは、発端はまだ…
第六回から第十回まで超意訳:南総里見八犬伝をお届けしました。まだ八犬士は出ていませんが、もうすぐ登場の予定です。 再び小ネタ集です、気になったことを書いてみました。 ①玉梓の言い分には一理あり裁判の場で悪女玉梓は、検事兼裁判官の金碗孝吉にこう…
【第十回 禁を犯して、金碗孝徳、女性を失う/腹を裂いて伏姫、八犬士を走らす】 里見義実の夫人五十子は、八房の異常事態を侍女から聞くと驚き、裾を掲げて急いで伏姫の部屋に駆けつけた。 部屋に着いてみれば、侍女たちは戸口にいて、亭主の治部少輔殿が中…
かくて安西景連は、里見義実の使者である金碗大輔を欺き、その足を留めることに成功した。その間に、密かに軍兵を手分けして派遣し、俄かに里見の両城へひしひしと押寄せた。 その一隊は二千余騎で安西景連がみずから率いており、滝田城の四方を囲み、昼夜を…
金碗八郎孝吉が急に自決してしまったが、その深い思いを知らない者は、「死ななくても良かったのに。手柄があったのに賞を辞退し、惜しむべき命を失ってしまったのは、裁きの場で玉梓に罵られたことを恥じたのだろう」 と酷いことを言うのだった。 それはま…
の追加のキャスティング決定ですって。 詳しくは下記の通り。 役所広司主演『八犬伝』、八犬士に渡邊圭祐、水上恒司ら最旬キャスト集結!9名の新キャストが発表(シネマトゥデイ) - Yahoo!ニュース 役所広司主演で映画化される『八犬伝』(10月公開)で、八…
東條城から駆けつけた杉倉氏元の使者、尼崎輝武が首を持ってきたので、里見義実は首実検を行った。 そして尼崎輝武を近くに招いて、合戦の詳細を自ら尋ねた。「滝田攻めの軍の兵糧が乏しいことは、杉倉殿も以前から心配しておりました。百姓に命じて運ばせよ…
まさかのニュースでした。 山田風太郎さんが朝日新聞に連載されていた八犬伝を映画化、だそうです。 虚の世界で里見八犬伝を描き、実の世界で滝沢馬琴翁の生活を描く物語でした。 とても2時間やそこらでは映画化は厳しいと思うのですが、期待せざるをえませ…